表題を「男の子だましい」にしようと考えたのですが、ふと「虫愛ずる姫」を思い出しました。堤中納言物語に出てくる平安時代のお姫様の話です。毛虫が大好き、一日中虫と遊んでいたという姫様、今でいうオタクですね。今回はオタクっぽい話です。
せなかに大きなひれ状の突起がついたスピノサウルスは子供のころから大好きな恐竜でした。肉食恐竜なのにチラノザウルスより華奢な印象があり、そのくせ背中にはでかい帆柱、小さい顔には残忍なギザギザの歯が並び、とても個性的な恐竜でした。
同世代の子供はみなウルトラマンに出てくる怪獣が大好きでしたが、そこから派生して恐竜好きになる子供も多かったのですね。
そこから図鑑少年となり、その流れで生命とか進化とかやや難しい本を読むようになり、決定的だったのが大学生のころ初めて読んだアルフレッド・ローマーの「脊椎動物の歴史」です。脊椎動物の進化論と言えばこの本という名著で、図版も豊富でその後の愛読書となりました。
最近読んだのが「脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか」です。この本で目からうろこの経験をしました。そもそもなぜ羽で飛べるのかを考えたとき、航空力学による揚力の発生の説明が必ず出てきます。飛行機の翼の断面を見るとうすいかまぼこ型になっているのがわかります。翼の下面を通る気流に比べ、上面を通る気流のほうが速く流れるため、ベルヌーイの定理により上面の圧力が下がり、結果的に揚力が生じるというものです。
この説明がどうしても腑に落ちず、ずっとわからないまま放っておいたのですが、この本では翼の上面を流れる空気分子の運動方向が翼を離れる方向に向かうため、翼と空気の接触面で圧力が下がることが図解されていて、40年わからなかったことが氷解しました。
先日新聞でこの記事を見た瞬間「ガン!」ときました。やはりスピノサウルスは水中生物だったんだ!どう見てもからだのわりに手足が細く、せなかのでっぱりや尾っぽは背びれ・尾びれっぽいと思っていました。おそらくワニとイルカを合わせたような暮らしをしていたのでは?ドキドキです。久しぶりにオタク心が揺り動かされました。