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ゴフ家の物語

 イギリスの片田舎ブラクスビーに住む軍人一家ゴフ家三代の物語です。先祖代々騎馬兵として戦い、祖先が設立した軽騎兵連隊を率いてきました。イギリスで産業革命が始まって以来、戦争のやり方が急激に変化していきますが、ゴフ家の男たちは先祖代々受け継がれた誇りを失わずに生き抜こうとします。
 この三部作で描かれた世界、すなわち19世紀後半から20世紀前半英国が経験した戦争は以下の通りです。

  • クリミア戦争 1853-1856 ロシア対オスマントルコ・イギリス・フランスで行われた。バラクラバの戦いで、主人公の一人コルビイ・ゴフが所属する騎兵連隊はロシア軍陣地に対し無謀な突撃を行い、壊滅的な打撃をこうむるが、コルビイは奇跡的に生き残る(史上有名な軽騎兵の突撃)。
  • アメリカ南北戦争 1861-1865 アメリカ北部諸州と南部諸州の間で行われた戦争。コルビイは視察を兼ねて記者としてアメリカに渡る。北部側から入るが戦乱に巻き込まれ南軍につかまるものの、そこで生涯の伴侶となる女性と出会う。
  • 普仏戦争 1870-1871 フランスとプロイセンの間で行われた戦争。コルビイは政府の依頼によりフランス側から視察を行う。ライフル銃、マキシム機関銃や長距離砲の登場により、古典的な騎兵隊の役割は終わったと実感する。
  • ズールー戦争 1879 槍と盾で武装したズールー族がイギリス軍を撃破したことで有名(イサンドルワナの戦い)。イギリスの勝利で終わる。南アフリカに赴任したコルビー一家はさまざまな試練に出会う。
  • ボーア戦争(第1次) 1880-1881 南アフリカにおけるボーア人(オランダ系移民の子孫)の独立戦争。ボーア側の勝利に終わる。
  • ボーア戦争(第2次) 1899-1902 イギリスの勝利。
  • マフディー戦争 1898 イギリス軍がスーダンのマフディー教徒と戦う(オムダーマンの戦い) ダフニー(コルビーの息子)の初陣。コルビーも将軍として参戦。
  • 第1次世界大戦 1914-1918 ダフニーは騎兵隊の将校として転戦するが、騎兵隊の役割は終わったことを痛感する。世界初の戦車が登場、期待ほどの活躍は見せなかったものの、ダフニーは戦車こそ未来の騎兵隊になると見抜く。転任先の中東では騎馬隊を率いトルコ軍相手に大活躍し、勝敗を左右する戦いで大勝するも、受けたけがが原因で戦没する。
     イギリス本国では父コルビー(元帥になっている)が悲報を聞いた後に急死する。
  • 第2次世界大戦 1939-1945 ジョシュア(コルビーの孫・ダフニーの息子)は祖父・父と同じ連隊に入る。入隊時は騎兵隊だったが、急激な改革の結果戦車隊に生まれ変わり、戦車隊の将校としてフランスに上陸、ドイツ軍と戦う。ライン川を越えた地点にあるドイツ軍の強固な防衛陣に対し、早期の終戦を狙う上層部の命令が下り、ジョシュアの戦車隊はほとんど自殺的ともいえる突撃を行う。100台の戦車のうち5台だけが生き残るが、ジョシュアは奇跡的に生き残る。祖父が経験したバラクラバの戦い(軽騎兵の突撃)を思い、イギリスで家族とともに新しい生活を始めることを夢見る。

「お前らがこの連隊に入れたことをラッキーと思え。おれたちゃすごい連隊なんだ。英国軍で唯一、緑の制服を着た騎兵隊だからな。なぜかだと?ワーテルローの戦いで思いっきりポーランド槍騎兵をぶちのめして、やつらの服をまねたのさ。ゴフ・グリーン。ゴフの闘鶏。若後家づくり。つかみ屋!ぜんぶ俺たちのことだ!フランスの鷲頭を分捕ったときに、すごく見えるように爪をでかくして持ち歩いたからだ!若後家づくりはクリミアでもらったあだ名だ。
 もう一つ、びんの運搬屋の別名だってある。サラマンカでわれわれはマーモン元帥の馬車を捕獲した。たっぷり財宝が乗っかってると思ったら、代わりに元帥の身の回り用品が見つかった。それ以来ほかのやつらはおれたちを尿瓶の運搬屋と呼ぶ!」

 こんな感じで兵士たちは連隊魂を叩き込まれていきます。戦場で頼りになるのは仲間だけ、忠誠を誓うのは国でもなく、軍隊でもなく連隊だけです。今の時代から見るとアナクロに思えますが、ちょっと前までは日本にもこんな世界があったのだろうなと想像しました。

 中国の三国志や日本の戦国時代を扱った小説を読んでわくわくしたのと同じで、こういった小説は眠っていた男の子魂を刺激するようです。自分たちと全く異なる時代、異なる地域のことをそこにいるかのように経験できる。歴史小説の醍醐味を教えてくれる作品です。

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