• ランニング、洋書ミステリー、ドクターのつぶやき。ちょっとはなれてあれこれ考えました。

久しぶりのジョン・グリシャムさん

 だいぶ前にジョン・グリシャムさんの小説を読んで感心したのですが、アマゾンで新しい小説が出版されていたので久しぶりに読んでみました。

直訳「殺しの時間」日本語版は「評決のとき」
直訳「許しのとき」

 真子さん・小室さん夫妻の話がマスコミをにぎわせているので、アメリカの弁護士さんはどんな暮らしをしているのか知りたかったわけです。グリシャムさん自身が弁護士資格を持ち、法律業界の裏も表も知り尽くしていますから、まさにうってつけです。
 読んでいて痛感するのはアメリカと日本の国の成り立ちのちがいです。アメリカの歴史は開拓の歴史です。(白人から見て)何もないところを自ら切り開いて国を作っていったので、自分の身は自分で守らなければいけないという考え方が骨身にしみています。だから基本的に誰もが武器(銃)を持つことに寛容です。
 日本では奈良時代の律令制度のころから全国各地に役所や道路が整備され、程度の差こそあれ、庶民が武器(刀)を持つことに制限が加えられてきました。ちょっと例外的なのが戦乱の時期で、農民が自ら武器を取り、自分たちを守ります。その頃の様子がよく描かれているのがこの小説です。

「足軽仁義」シリーズ 現在6巻まで出版

 今のアメリカって、日本で言えば戦国時代から江戸時代初期のころ、まだまだ荒々しい雰囲気が残る時代と似ているかもしれませんね。先日アメリカで、BLM(黒人差別への抗議運動)デモ中に参加者が自警団に撃たれて亡くなる事件がありました。なんと犯人は無罪!でもアメリカの司法制度上は納得のいく判決なのだそうです。彼我の差を感じます。

 グリシャムさんの一冊目「A Time to Kill」は娘をレイプされた父親が犯人を射殺する話、2冊目の「A Time for Mercy」では母親を殺されそうになり、さらに妹をレイプされた少年が犯人を射殺する話です。ミシシッピの田舎町で、主人公の弁護士が被告を守るため丁々発止の弁護を繰り広げます。ディープサウスと呼ばれる差別意識の強い地域、お互いに顔見知りばかりの地域でいかに戦い、陪審員たちを説き伏せ、正義を勝ち取っていくかが描かれていますが、人間くさい主人公と周囲の人たちが織りなす人生活劇もまた見ものです。

 ふう、弁護士って大変だな。よくも悪くもタフなアメリカの司法業界で、小室さん夫妻がしっかりと生きぬいていけるよう見守ってあげたいですね。
 

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